
はじめに
当たり前に存在している道路。都心でも田舎でも、アスファルトで舗装された道路がほとんどです。これだけ科学技術が進歩した今、アスファルトばかりというのも悪く言えばバカの一つ覚えのような気もします。アスファルト以外にも優れた舗装のやり方があるのでは?なぜアスファルトばかりなのか?ふとそんな疑問がわいたため。舗装について調べてみました。
記事を読み進めて頂くのに先に結論だけ簡単にお伝えすると「都市型・高密度・地震国」という日本の特性に合っているため、多くの場所でアスファルト舗装が選ばれており現在の最適解だということです。それを踏まえながら、舗装の歴史や技術的なポイントを深堀りしていきたいと思います。
舗装に求める要件
何のために舗装するか、舗装をするにあたり気にすべき観点は何があるか、このあたりをまずは整理して理解したいと思います。
舗装に求める機能・目的
- 平坦性(車等の通行しやすさ)
- 耐久性
- 安全性
- 景観性
- 地域・自然条件等個別の特殊事情にあわせた機能
舗装に求められる機能・目的は、主に上記の5つが挙げられます。まずは、何はともあれ、人や車が通行しやすくするためであるのは言うまでもないです。次に大事なのは、耐久性です。車が通るたびに補修するような舗装ならやる意味がありません。また、平坦性と少し重なる部分もありますが、道の凸凹や水たまりが少なく、スリップしにくいという部分で安全に通行できるかという点も大事です。さらに、きれいに整備された道路は、街並みの景観をよくし、整然とした環境は通行者にも心理的にも影響し治安の向上にもつながりうるものと思われます。
以上の4点は一般的な機能ですが、最後に舗装する地域や自然条件等の個別に求められる機能も要求されます。例えば、寒暖差が激しい、降雨量が多い、大型車両の通行が多いなどその場所ごとに必要とされる舗装の材質であったり排水機能、強度など一般的な要件とは別に留意すべきこともあります。
舗装の実現性
上記の機能・目的があることに越したことはありませんが、実現しようとすると当然、お金・時間・労力をどこまでかけるか考えなくてはいけません。どのような物事でもトレードオフの関係性に対して判断することが重要です。
- 初期費用
- 施工期間
- 施工の難易度
- 維持修繕コスト
初期費用は一般的に大きな金額になります。予算の確保ができるのかが一番最初の問題になるかと思います。また、施工すると通行止めにしたり日々の暮らしにも大きな影響があるため、どのくらいの期間でできるのかというのも検討しなくてはいけません。費用とも連動しますが、特殊な工法になれば対応できる業者も限られ、費用やスケジュールの不確実さが増します。忘れがちなのが、維持修繕のコストです。リスクを洗い出し、どういう想定を組んで、維持修繕のコストを見積もるかはプロジェクトの責任者の力量が問われるところです。
舗装の歴史
舗装の歴史を振り返ることで、これまで述べてきた、舗装の要件や実現性という課題に対してどのようなアプローチがなされてきたのか俯瞰して捉えることができると思います。
道路舗装は人類の文明発展とともに進化してきました。本記事では、古代・近代・現代の3区分で「何が技術的ブレイクスルーだったのか」を整理します。
🏛 古代の道路舗装

図の見どころ(要点):
- 「層」を分けて役割を持たせる(支持・整形・表層)
- 表面だけでなく“下から作る”ことで耐久性を確保
- 排水を前提に側溝や路肩まで含めて設計
① 多層構造の確立(ローマ道路)
- 路床(地盤整正)
- 砕石層(支持層)
- 石灰モルタル層(整形・締固め)
- 石板舗装(表層)
ポイント:現代の舗装構造にも通じる「層ごとの機能分担」を早期に実装していた。
② 横断勾配(クラウン)による排水設計
- 道路中央を高くして水を左右へ流す
- 水が溜まらない=凍結・洗掘・劣化を抑える
- “排水”が耐久性の根本条件であることを示す
ポイント:舗装の寿命は「水をどう逃がすか」で決まるという思想の始まり。
③ 石材加工技術(精密な組積)
インカ道などでは、石材を精密に加工して組み合わせ、モルタルに依存しない高耐久の舗装を実現した例もあります。
🏭 近代(18〜19世紀)

① マカダム工法(粒度管理の概念)
- 小粒径砕石を敷き均し、締固めて舗装を形成
- 路盤支持は地盤の良否に影響されやすい
ポイント:「粒の大きさを揃え、締固めで強くする」という材料工学的な発想。マカダムと聞けばローラーを思い出しますが機械名の由来になっている人物です。
② テルフォード工法(構造補強型)
- 大きな石材で下層を安定化し、上層を砕石で整える
- 重交通に耐える構造を意識
ポイント:下層から支持力を作り込む=現代の路盤設計の原型。
③ アスファルト舗装の登場(19世紀後半)
- 急速な都市化による交通量の増加、騒音問題の悪化
- 天然アスファルトの普及(ピッチ湖やフランスのアスファルト鉱床からの安定供給が可能に)
- 舗装技術の確立
- 公衆衛生意識の高まり(馬車の馬糞の堆積、排水性の悪さなどにより悪臭・感染症リスクが高まった)
ポイント:石材中心から、結合材を使う舗装へ。都市の快適性(騒音低減)にも寄与。
🚗 現代(20世紀〜)

図の見どころ(要点):
- 表層:すべり抵抗・防水・騒音対策
- 基層:荷重分散・疲労耐久
- 路盤:支持力の中核(変形抑制)
- 路床:地盤(改良の有無が寿命に直結)
① アスファルト舗装の高度化
- 加熱混合アスファルト(HMA)
- 改質アスファルト(ポリマー添加)
- 排水性舗装(ポーラスアスファルト)
ポイント:交通荷重・温度・水の影響を踏まえて、材料設計で損傷モードを抑える。
② コンクリート舗装の発展
- 連続鉄筋コンクリート舗装(CRCP)
- 目地設計理論(温度伸縮・ひび割れ制御)
ポイント:初期コストよりも「長寿命・維持管理」を重視する場面で強み。
③ 舗装設計理論(科学的設計へ)
- AASHTO設計法
- 多層弾性理論・構造解析
ポイント:経験から脱し、交通量・支持力・材料特性を使って厚さや構成を決める。
④ 環境配慮型舗装(循環・脱炭素)
- 再生アスファルト(RAP)
- 中温化技術(製造温度を下げて省エネ)
- CO₂削減型の材料・施工
ポイント:性能だけでなく、資源循環・CO₂削減も設計要件になっている。
📌 まとめ|舗装技術の進化(一覧)
| 時代 | 主材料 | 技術の本質 |
|---|---|---|
| 古代 | 石材 | 排水・耐久を重視した多層構造の導入 |
| 近代 | 砕石 | 粒度管理・力学的安定(支持力の確保) |
| 現代 | アスファルト・コンクリート | 構造設計理論・長寿命化・環境対応 |
日本でアスファルト舗装が普及しているわけ
日本の道路舗装は、圧倒的にアスファルト舗装が多いのが特徴です。その背景には、気候条件・都市構造・経済性・維持管理文化など、日本特有の事情が大きく関係しています。
① 施工・補修が速い(都市型インフラに適合)
日本の都市部は交通量が多く、上下水道・ガス・通信などの埋設物も密集しています。
- 部分補修が容易
- 掘削復旧が早い
- 夜間施工で短時間開放が可能
このように、頻繁な掘り返しが発生する都市環境では、柔軟に対応できるアスファルト舗装が適しています。
② 初期費用が比較的安い
高度経済成長期、日本は短期間で道路網を整備する必要がありました。
- 施工スピードが速い
- 養生期間がほぼ不要
- 初期コストが比較的低い
大量整備が必要だった時代背景において、アスファルト舗装は合理的な選択でした。
③ 日本の気候・地震条件との相性
- 多雨・台風
- 寒冷地での凍結融解
- 地震が多い
アスファルト舗装は柔軟性があり、地震時の変形に追従しやすい特徴があります。また、損傷が局所化しやすく補修が容易です。
④ 騒音対策に有利
住宅密集地が多い日本では、交通騒音対策が重要です。
- アスファルト舗装は比較的静か
- 排水性舗装はさらに低騒音
生活環境の向上という観点でも、アスファルト舗装は評価されてきました。
⑤ 維持管理文化との適合
日本は「長期間放置する」よりも「小まめに補修する」維持管理思想が強い傾向があります。
- 表層オーバーレイによる更新
- 早期補修による劣化抑制
この運用方法は、補修性に優れるアスファルト舗装と相性が良いのです。
日本でアスファルト舗装が主流となった理由は、単なるコストの問題だけではありません。
- 都市構造との適合
- 施工スピード
- 気候・地震条件
- 騒音対策
- 維持管理のしやすさ
これらの複合的な要因により、日本ではアスファルト舗装が現在も主流となっています。
最後に
弊社も普段、当たり前のように舗装工事に携わっておりますが、改めて歴史的な流れや技術的なポイントを理解することで施工にかかる一手間ひと手間に何の意味があるのか明確に意識でき、いい勉強になりました。土木工事の奥深さや面白さというものを色々な切り口で今後もお伝えしていければと思っていますので、弊社BIZ BLOGをご覧いただけたらうれしいです!
